ノイズ対策技術 / 事例紹介(民生)
サービスロボットのノイズ対策-2(2/3)
INDEX
4. ノイズ状況の確認と対策手法の検討
エミッション、イミュニティのそれぞれにおいて、現状がどのようになっているかを確認して、ノイズ対策手法を検討しました。
5. エミッション(放射ノイズ)に対するノイズ対策
まず、エミッションノイズの状況を確認しました。市販のサービスロボットの放射ノイズを測定します。
- 測定系はCISPR16-2-3を参考にした
- ノイズ許容値は、共通規格であるIEC61000-6-3(住宅・商業環境)を参考にした
6. ノイズ対策前の放射ノイズ状況(初期状態)
30MHz-200MHzの帯域でノイズがIEC61000-6-3の規格値を超えていることが確認されました。多くのサービスロボットでは、この帯域のノイズが問題となることが多いです。
7. エミッション(放射ノイズ)問題発生のメカニズム
ノイズ源と伝播経路について検討しました。
今回評価した機器にはブラシレスモーターが採用されていました。ブラシレスモーターを駆動するためにドライバ回路が使われますが、ブラシレスモーターのドライバ回路としては一般的に三相PWM制御回路が使われます。この制御回路には、各相あたり2個、全部で6個のスイッチング素子が使われており、これらの素子がスイッチングノイズを発生します。このスイッチングノイズがケーブルに伝導しますが、ロボットで使用されるケーブルはシールドのない絶縁被覆ケーブルであることが多いため、ケーブルから外部にノイズが放射します。また、モーター内のコイルにもノイズが伝導するため、モーター本体からもノイズが放射します。
- ドライバ回路のスイッチング素子により、スイッチングノイズが発生する
- スイッチングノイズがケーブルに伝導し、ケーブルからノイズが放射する(放射ノイズA)
- スイッチングノイズがブラシレスモーターの巻線に伝導し、モーターからノイズが放射する(放射ノイズB)
8. エミッション(放射ノイズ)のノイズ対策手法
モータードライバ回路で発生したスイッチングノイズがケーブルに伝導してケーブルから放射したり、モーター本体から放射しているため、ケーブルへの伝導を防げば良いことがわかります。
このため、ケーブルのコネクタ付近にノイズフィルタを挿入します。ノイズの周波数が30MHz~200MHz(場合によっては300MHz)の帯域であるため、この周波数帯に効果のある部品を選定します。NFZ2HBMやNFZ32BW、NFZ5BBWなどのNFZシリーズ、BLT5BPTシリーズなどが適しています。なお、モーターが何らかの理由によりロックした場合、瞬間的なスパイク電流が流れることがあるため、部品の定格電流は通常の電流の3~5倍となるものを選ぶことが望ましいです。今回はNFZ2HBMを使用しました。
今回紹介したフィルタ
ノイズフィルタ NFZシリーズ
小型で大電流に対応したノイズフィルタです。ノイズの周波数にあわせて定数を選択します。
フェライトビーズ BLT5BPTシリーズ
最大11Aの大電流に対応。最高使用温度150°Cで使用箇所を選びません。
9. エミッション(放射ノイズ)対策の効果
ケーブルを取り付けるコネクタ付近にNFZ2HBM4R4SN10を取り付けたところ、ノイズを規格値以下に抑え、5dB以上のマージンを確保することができました。
今回紹介したフィルタ
フェライトビーズ NFZシリーズ
小型で大電流に対応したノイズフィルタです。ノイズの周波数にあわせて定数を選択します。
- 続けて読む:イミュニティ(近接照射イミュニティ)について