Part1 トレンド
積層セラミックコンデンサ,
高性能半導体デバイスに不可欠な存在に
抵抗,コンデンサ,インダクタ。比較的地味な存在に思われがちな受動部品だが,実際は最先端の電子機器に欠かせないものになっている。特に,最先端の半導体デバイスにとって,積層セラミックコンデンサは極めて重要だ。このコンデンサがなければ,正常な動作も期待できない。かつて,エレクトロニクス業界では「いずれコンデンサは,半導体デバイスに取り込まれる」と囁かれていた。しかし実際は,半導体デバイスの進化とともに,積層セラミックコンデンサの重要度が増す傾向にある。
砂糖の粒子よりも小さい積層セラミックコンデンサ。この非常に小さな部品が電子機器の中で担っている役割をご存じだろうか。半導体デバイスに必要な電力供給のサポートや,誤動作や性能劣化の原因となるノイズの除去といった重要な役割を担っている。最先端の微細加工技術で製造するマイクロプロセッサやDSP,マイコン,FPGAなどの半導体デバイスも,積層セラミックコンデンサなくしては正常な動作を期待できない。
小型化と大容量化の歴史

図1 積層セラミックコンデンサの構造
誘電体層と内部電極を幾重にも積み重ねる ことで,大きな静電容量を実現している。
現在,積層セラミックコンデンサの市場規模は,アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサ,フィルムコンデンサなどのさまざまなコンデンサの中で最も大きい。2008年における国内出荷数量は6278億個,国内出荷金額は3059億円に達した(経済産業省の機械統計による)。第2位のアルミ電解コンデンサは,国内出荷数量が182億個,国内出荷金額が1743億円である。その差はかなり大きい。
今や,コンデンサ市場でトップの地位を占める積層セラミックコンデンサだが,製品化当初はなかなか市場に受け入れられなかった。積層セラミックコンデンサのアイデアを考案したのは米国企業である。1961年に始まったアポロ計画を推進する過程で,小型で静電容量が大きいコンデンサが必要となり誕生した。薄い誘電体に電極を形成し,これをいくつも重ね合わせることで小さな体積に大きな静電容量を詰め込んだコンデンサを実現したのだ(図1)。
この技術をいち早く導入し,1965年に第一号品を市場に投入したのが村田製作所である。同社の製品は,AMラジオのLC共振回路に向けた100pF品で,厚さが50μmの誘電体膜を積み重ねたものだった。誘電体材料は酸化チタン(TiO2)を採用した。「製品化当初はまったく売れなかった。しかし,超薄型のペーパー・ラジオの登場をきっかけに,ほかのコンデンサに比べて小型だった積層セラミックコンデンサの市場が急拡大した」(同社 コンポーネント事業本部 本部長の山内公則氏)。
その後の積層セラミックコンデンサの歴史は,「小型化と大容量化の歴史」という言葉で言い尽くすことができるだろう。一般にコンデンサの静電容量Cは,
C=εS/d
で表現できる。ここでεは誘電率,Sは電極面積,dは電極間距離(誘電体の厚さ)である。つまり一定体積の中で静電容量を増やすには,εが高い材料を用いるか,誘電体を薄くするしかほかに方法がないわけだ。
誘電体材料に関しては,製品化当初は酸化チタンを採用していたが,比較的早い段階にチタン酸バリウム(BaTiO3)を導入した。その後もこの材料に改良を加えることで比誘電率は向上し続けており,現在では3000程度に達している。これは,酸化チタンの比誘電率である数十に比べると2けたも大きい。
誘電体の厚さについては製品化当初は50μmだったが,その後徐々に薄型化が進み,現在では0.5μmに達している。つまり,製品化当初と比較すると誘電率は100倍に,厚さは1/100になっている。厚さが1/100になれば,積層数を100倍に増やせる。従って,静電容量で考えると,同じ体積のコンデンサならば100万倍に増えたことに相当する。逆に体積で考えると,同じ静電容量ならば,1/100万の小型化が可能になっていることを意味する。
デカップリング用途が市場の7割を占める
| 電子機器 | 積層セラミックコンデンサの搭載数 |
| ノートパソコン | 730 |
| 携帯電話機 | 230 |
| デジタルビデオ・カメラ | 400 |
| デジタルテレビ | 1000 |
| カーナビゲーション装置 | 1000 |
表1 電子機器に搭載されている積層セラミックコンデンサの個数
積層セラミックコンデンサは前述の通り,マイクロプロセッサやDSP,マイコン,FPGAなどの半導体デバイスの周囲に配置し,その半導体デバイスが正常に動作するようにサポートする用途に使われている。搭載されている個数(員数)は非常に大きい。例えば,ノートパソコンでは約730個,携帯電話機では230個,デジタルテレビやカーナビゲーション装置ではいずれも約1000個も使われている(表1)。
こうした積層セラミックコンデンサの役割は大きく分けて二つある。一つは,半導体デバイスへの電力供給のサポートである。一般に半導体デバイスは動作状況によって,必要とする電流が大きく変動する。多くの電力を急に必要とする場合もある。こうした負荷急変時に,比較的遠く離れた場所に実装してある電源回路(DC-DCコンバータなど)ではすぐに対応できない。そこで,半導体デバイスの周囲に実装したコンデンサに電力を蓄えておき,そこから電力を供給するわけだ(図2)。

図2 半導体デバイスの動作をサポートするデカップリング・コンデンサ
半導体デバイスの周囲には,数多くのデカップリング・コンデンサが実装されている。役割は二つある。一つは,半導体デバイスに電力を供給する役割。もう一つは,ノイズ成分を電源/グラウンド層に迂回させる役割である。なお,デカップリング・コンデンサには大きく分けると三種類のコンデンサが使われている。タンタル電解コンデンサと,大容量の積層セラミックコンデンサ,ESL(等価直列インダクタンス)が特に低い積層セラミックコンデンサである。
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もう一つの役割は,EMI(electro-magnetic interference)の原因となるノイズ成分を除去することである。いわゆるフィルタの役割である。コンデンサの高周波インピーダンスが低いことを利用して,周波数の高いノイズ成分だけを電源/グラウンド層に迂回させる。
一般に,前者の役割をデカップリング・コンデンサ,後者の役割をバイパス・コンデンサと呼ぶ。大容量の積層セラミックコンデンサが登場したことで,両方の役割を担うことが可能になった。
デカップリングやバイパスの次に多い用途は,DC-DCコンバータの出力部に置く平滑フィルタである。従来,この用途にはアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサが使われていた。しかし,電子機器の小型化/薄型化を目的に,1990年代後半から積層セラミックコンデンサが使われ始めている。
この用途で積層セラミックコンデンサが使えるようになったのは,電源用半導体メーカーの努力によるところが大きい。平滑フィルタのコンデンサは,DC-DCコンバータのフィードバック制御ループの一部を構成している。このため,ESRが小さすぎると制御ループの位相余裕が小さくなり,DC-DCコンバータが安定して動作しなくなるという問題が発生してしまう。
しかし一方で,DC-DCコンバータを小型/薄型化したいという電子機器メーカーの要望は強い。そこで電源用半導体メーカーがDC-DCコンバータICの制御回路に工夫を施すことで,積層セラミックコンデンサの使用を可能にした。2000年ころから電源用半導体メーカーは,積層セラミックコンデンサが使えることをセールス・トークとして,そのDC-CコンバータICを電子機器メーカーに売り込んでいる。
現在,デカップリングと平滑フィルタの用途だけで,積層セラミックコンデンサ市場の約7割を占めているという。このほかに使用される数量が多い用途としては,高周波フィルタ用やインピーダンス整合用,温度補償用などが挙げられる。
※ 会社名,製品名は,各社の商標もしくは登録商標です。
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小型化/薄型化だけではない,
用途に最適化した品種の開発が進む



