Part4 製品動向(2)
小型化/薄型化だけではない,
用途に最適化した品種の開発が進む

山内公則氏
村田製作所
常務執行役員
コンポーネント事業本部
本部長
積層セラミックコンデンサにはさまざまな仕様がある。外形寸法や静電容量はその一つにすぎない。用途によっては,これら以外の仕様を重要視する場合もある。そこで,それぞれの用途に向けて,電気的な特性や信頼性に関する特性を最適化した積層セラミックコンデンサの開発が進んでいる。例えば,村田製作所では,ESL値を低くしたりESR値を制御することでノイズ吸収効果を高めた製品や,ハイブリッド車などのインバータ回路に向けた大型品を製品化している。
0603品から0402品へ。そして,さらなる小型品の開発が進む積層セラミックコンデンサ。薄型化を究極まで進めることで,プリント基板への埋め込みを狙う製品の開発も進んでいる。
しかし,積層セラミックコンデンサ開発の方向性は,小型化や薄型化だけではない。各アプリケーションに照準を定め,電気的な特性や信頼性に関する特性を最適化した製品の開発も着実に進んでいる。例えば,村田製作所では,半導体チップのデカップリング用途や,自動車用途に特化した積層セラミックコンデンサを開発し,既に販売を開始している。
低ESL・ESR制御
高速化・低駆動電圧化する半導体チップのデカップリング用途向けでは,二つの新製品を投入している。
一つは,ESL(equivalent series inductance)が低い上に静電容量が大きい「LLL/LLA/LLMシリーズ」である。これまでデカップリング用途では,積層セラミックコンデンサだけでは静電容量が足りないため,アルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサと組み合わせて使うケースが多かった。この新製品を使えば,積層セラミックコンデンサだけで対応できるようになるという。

図1 低ESL品のノイズ吸収特性と電源供給特性
LLL/LLA/LLMシリーズはいずれもESL値が低い。ただし,品種によってESL値が異なるため,ノイズ吸収特性と電源供給特性に違いが生じる。最もESL値が低いのはLLMシリーズの45pHである(緑色)。このため,ノイズ吸収特性と電源供給特性のいずれも最も良い結果が得られている。次にESL値が低いのはLLAシリーズの90p(青色),次はLLLシリーズの160pH(赤色)である。ESL値の違いは電極構造にある。(クリックで拡大します)
LLL/LLA/LLMシリーズは,外形寸法やESL値,静電容量の違いで複数の製品を用意している。製品によって,ノイズ吸収特性や電源供給特性に違いがある(図1)。例えば,「LLL31」は外形寸法が1.6mm×3.2mmで,ESL値が180pH,静電容量が最大10μF。「LLA31」は外形寸法が3.2mm×1.6mmで,ESL値が90pH,静電容量が最大2.2μF。「LLM21」は,外形寸法が2.0mm×1.25mmで,ESL値が45pH,静電容量が最大2.2μFである。
各製品のESL値の違いは電極の構造による。LLLシリーズは,電極を短辺ではなく長辺に設けた「LW逆転」と呼ぶ構造を採用する。LLAシリーズとLLMシリーズで採用したのは,電極を複数設けて正極と負極を互い違いに配置する構造である。
もう一つの新製品は,「コントロールドESR」という考え方に対応した「LLRシリーズ」である。コントロールドESRとは,意図的にESR(equivalent series resistance)値を高めることで,ノイズの吸収特性を高める手法だ。ESR値が低いと,インピーダンスの高周波領域に鋭い共振点が発生する。その結果,それよりも少し高い周波数に同程度の鋭さの反共振点が現れてしまう。反共振点の周辺では,インピーダンスが高くなる。従って,ノイズを効果的に吸収できなってしまうのだ。

図2 ESRを意図的に高めて反共振点を低くする
ESRが低いと,反共振点におけるインピーダンスが高くなり,効果的に雑音を吸収できなくなる。そこでESRを意図的に高めることで反共振点を鈍らせ,インピーダンスを低く抑える。この結果,効果的に雑音を吸収することが可能になる。(クリックで拡大します)
そこで,ESR値を意図的に高めることで反共振点を鈍らせ,インピーダンスを低くすることでノイズの吸収特性を高めようという考え方がコントロールドESRである(図2)。これまで,エレクトロニクス業界では一般に「ESR値は低い方が良い」と考えられていた。コントロールドESRは,こうした「常識」を覆す新しい考え方だ。このため現時点では,「あまり使われていないが,今後考え方が浸透するに従って,普及していくと考えている」(同社 コンポーネント事業本部 本部長の山内公則氏)という。
現在同社が製品化しているのは,外形寸法が0.8mm×1.6mmの品種である。定格電圧は4V,静電容量は1.0μF,ESL値は120pHである。ESR値は100mΩと220mΩ,470mΩ,1000mΩの4種類の中から選択できる。
自動車用高信頼品
独自の材料・構造で車載用途に求められる信頼性をクリアした積層セラミックコンデンサが2品種ある。

図3 ハイブリッド車や電気自動車に向けた大型の積層セラミックコンデンサ
村田製作所の「EVCシリーズ」。外形寸法は32mm×40mm。定格電圧は200V。150Vの直流電圧を印加した際の実効的な静電容量は38μFである。
一つは,ハイブリッド車や電気自動車などに搭載するモーター駆動用インバータの平滑コンデンサに向けた「EVCシリーズ」である(図3)。外形寸法は32mm×40mmと極めて大きい。同社の汎用品の中で外形寸法が最も大きい5.5mm×5.0mm品に比べると,体積は約100倍に相当する。定格電圧は200V。150Vの直流電圧を印加した際の実効的な静電容量は38μFを確保した。許容リップル電流は25Armsを超える。
モーター駆動に向けたインバータなどの用途において,コンデンサに求められる性能は,直流電圧(DCバイアス)印加時の実効的な静電容量を確保することと,大きな許容リップル電流を実現することである。しかし,チタン酸バリウム(BaTiO3)を使う積層セラミックコンデンサでは,この二つの要求に対してバランス良く応えることが難しい。DCバイアス印加時の容量低下が大きくなったり,誘電損失による発熱が大きくなったりしてしまう。そこでEVCシリーズでは詳細は明らかにしていないが,専用のセラミック材料を開発することで,二つの特性の両立を可能にした。
もう一つは,振動などによる応力がかかっても,セラミック素材にクラックが生じにくい積層セラミックコンデンサである。通常の品種では,金属電極とセラミックの接続部に応力が集中し,そこにクラックが入ってしまう。そこで,開発した高信頼性品では,金属電極とセラミックの間に導電性樹脂を挟む構造を採用した。「樹脂は柔らかいため,接触部がルーズになる。このため応力の集中を避けられる。わざと弱くして,強くするという逆転の発想から生まれた」(同社 コンポーネント事業本部 セールスエンジニアリング統括部統括部長の毛利晃氏)。
※ 会社名,製品名は,各社の商標もしくは登録商標です。
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