電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2010年7月1日号に掲載された内容を再構成したものです。
| 掲載誌 | 電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2010年7月1日号 |
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No. TA1071
近年の携帯電話は、カメラ、GPS、ワンセグ、Bluetooth®、FeliCaチップ (おサイフケータイ®) などの機能が付加されアプリケーションの多機能化が目覚ましい。また、薄型端末やスライド式端末など、機能性に加え、デザイン性でも消費者ニーズが多様化している。このように携帯電話の小型化、多機能化、多様化が進む中、これらを支える技術の一翼を担っているのが電子部品の飛躍的な小型化、高性能化である。アンテナが受信した電波から必要な信号だけを選り分けて安定した通信を実現させる高周波フィルタは携帯電話に必須の電子部品である。その中でも表面弾性波 (SAW: Surface Acoustic Wave) デバイスは、その小型、高選択度という特徴を生かして、小型化、多機能化、多様化といった携帯電話の進化に貢献してきた電子部品の一つである。
また、携帯電話は更なる進化をとげており、通信品質の向上、通信速度の高速化などの対応 (ダイバーシティー対応、MIMO対応) が求められており、RF回路においては多バンド化や複数システム対応化が進められている。さらに、昨今の報道において話題となっている中国やインドといった新興国における携帯電話契約者数の増加もSAWデバイスの需要を大きく牽引している。特に中国においては、独自の通信方式を用いた携帯端末も存在する。
こういった背景のもと、同一の携帯電話内に用いられるRF回路の部品点数は増加する傾向にある。村田製作所ではこのような多様なニーズに応えるべく、携帯電話に用いられるSAWデバイスの商品開発に取り組んでいる。以下に携帯電話用SAWデバイスの最新開発動向を紹介する。
デュプレクサは、異なる周波数帯域を持つ送信信号 (送信回路からアンテナ回路へ流れる信号) と受信信号 (アンテナ回路から受信回路へ流れる信号) を同時にそれぞれの周波数帯域でフィルタリングし、送信回路から受信回路への信号の流入を防ぐという機能を持つ。この同時に送受信を行なうデュプレクサの機能をSAWの原理で実現したSAWデュプレクサはSAWデバイスの小型で高選択度という特長を生かしたデバイスである。
近年、携帯電話に用いられるRFIC (ベースバンド部からの信号を送信信号に変換し、逆に受信信号をベースバンド部で処理できる信号に変換するIC) の高性能化が進んできており、これまで必要とされていた受信用段間フィルタを必要としないRFICが主流となりつつある。受信用段間フィルタを用いる構成の場合、受信ポートが不平衡型のデュプレクサが求められていたのに対し、受信用段間フィルタを用いない場合、受信ポートが平衡型のデュプレクサが必要とされる。村田製作所は独自の低ロス化技術、高選択性技術、温度特性低減技術、広帯域化技術等を用いることで、非常に高特性な平衡型SAWデュプレクサ特性を実現している。
平衡型SAWデュプレクサの一例として、Band5用SAWデュプレクサを紹介する。デュプレクサには無線通信における受信感度を高め、安定した通信品質を保つため、低挿入損失かつ高減衰特性が求められる上に、送信回路から受信回路への信号流入を防ぐために高アイソレーション特性が求められる。村田製作所では2.5×2.0×0.55 (mm) の外形寸法 (外形写真を図1に示す) で、かつ送信周波数帯域の挿入損失が1.4dBtyp.、受信周波数帯域の挿入損失が1.8dBtyp.、送信回路から受信回路へのアイソレーション特性においては、送信周波数帯減衰量67dBtyp.受信周波数帯減衰量49dBtyp.と良好な特性を実現したSAWデュプレクサを量産している (特性を図2〜4に示す) 。
図1: 2.5×2.0×0.55mmサイズSAWデュプレクサの外形写真
図2: Band5平衡型SAWデュプレクサ 送信特性
図3: Band5平衡型SAWデュプレクサ 受信特性
図4: Band5平衡型SAWデュプレクサ アイソレーション特性
TD-SCDMAは第3世代携帯電話の通信方式の一つで、中国独自の仕様である。近年、中国における携帯電話の契約者数は増加の一途をたどっており、2010年4月時点で7億7千万人を超えるまでに至っている。その中で最も契約者数を多く抱えているチャイナモバイルはTD-SCDMAの普及に力を入れており、今後TD-SCDMA用SAWフィルタの需要が増加すると見込まれている。TD-SCDMAは送信と受信を時分割で切り替える方式を採用していることが特徴であることから、デュプレクサの需要がないものの、送受信用のフィルタ需要が発生する。
TD-SCDMA用に割り当てられている周波数帯は主に2つ存在し、一つは1880-1920MHzを通過帯域とするバンド、もう一つは2010-2025MHzを通過帯域とするバンドである。この2つのバンドに対して、送受信用にSAWフィルタが携帯電話に搭載されている。現在はそれぞれのバンドに対応したシングルタイプのSAWフィルタが1つずつ使用されることから、送受信用にそれぞれ2つのシングルフィルタが使用されている。
村田製作所では、回路基板上の実装面積削減に貢献する方策として、2つのシングルフィルタの機能を1.5×1.1×0.5 (mm) のサイズのパッケージに収めたTD-SCDMA用のデュアルSAWフィルタを開発、量産を開始している (図5に外形写真を示す) 。また、部品そのものの小型化に加え、フィルタ内に周辺部品の機能を取りこむ高機能化も実装面積削減の効果が大きい。これは、デュアルフィルタにおいて、入力側不平衡ポートを一つに共通化した1in2out品や1in4out品という独自技術を駆使した商品である。入力側不平衡ポートを共通化することでフィルタと接続されるスイッチ (SW) のポート数の削減あるいはSWの削減が可能となる。
一例として、今回新たに開発、試作を行なった、TD-SCDMA用1in2outデュアルSAWフィルタを紹介する。このデュアルSAWフィルタは、1880-1920MHz帯における挿入損失が1.6dBtyp.、2010-2025MHz帯における挿入損失が1.8dBtyp.と良好な特性を実現している (特性を図6、図7に示す) 。
図5: 1.5×1.1×0.5mmサイズ デュアルSAWフィルタの外形写真
図6: 1880-1920MHz帯の特性
図7: 2010-2025MHz帯の特性
今後の展望として、以下の3点が挙げられる。
※BPAW™は、株式会社村田製作所の商標です。
※Bluetooth®は、米国Bluetooth SIG, Inc.の登録商標です。
※おサイフケータイ®は、株式会社NTTドコモの登録商標です。