電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2010年8月19日号に掲載された内容を再構成したものです。
| 掲載誌 | 電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2010年8月19日号 |
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No. TA1081
世界の移動体通信市場は高度化、高速化がますます進み、現在の第三世代 (3G) のW-CDMA、CDMA2000、3.5GのHSDPAやCDMA2000 1xEV-DO、更には12月より3.9GのLTE (Long Term Evolution) の商用化が開始されようとしている。これらのシステムに伴い、携帯電話の基地局も発展を遂げており、基地局に使用されるパワーFETもGaAs系半導体から高出力、高耐圧、高効率を重視したGaN系半導体が使用されるようになってきた。
一方、インターネットの普及により光ファイバーを使った通信インフラの需要が拡大している。光通信ネットワークは高速大容量が必要とされ、基幹系の光トランシーバーにおいては2.5Gbps→10Gbpsで急速に普及が進んでおり、40Gbps、100Gbpsの開発も進行している。
村田製作所が提供する薄膜回路基板 "RUSUB®" は主に上記のパワーFET、光通信モジュールに採用されており、その特長、用途、使用例等について紹介する。
薄膜回路基板 "RUSUB®" は単層のセラミック基板の表裏面に金属膜を形成し、カスタムのコンデンサやカスタムの回路基板を構成したものである。
図1: 薄膜回路基板 "RUSUB®" の一例
基板厚さ、サイズを任意に設定でき、基板材料は表1に示すチッカアルミ基板 (比誘電率9) 、アルミナ基板 (比誘電率10) 、比誘電率39〜15000までのさまざまな高誘電率基板の中から選択でき、カスタムコンデンサやカスタムの回路基板に柔軟に対応することができる。
表1: 基板特性
| 基板素材 コード |
比誘電率 [Σr] (*1) |
最小寸法 (L×W×T) (*2)[mm] |
容量温度特性 [ppm/℃] (*3) |
スルー ホール |
Tan 抵抗 |
最小L/S [µm] (*4) |
線膨張係数 [ppm/℃] (*1) |
熱伝導率 [W/ (m・℃) ] (*1) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| N | 9 | 0.25×0.25×0.09 | - | ○ | ○ | 20/20 | 4.6 | 200.0 |
| A | 10 | 0.25×0.25×0.20 | - | ○ | ○ | 20/20 | 7.0 | 33.5 |
| H | 39 | 0.25×0.25×0.90 | 0±30 | ○ | ○ | 30/20 | 6.6 | 1.9 |
| K | 90 | 0.25×0.25×0.90 | -330±120 | × | ○ | 30/20 | 9.2 | 2.3 |
| U | 150 | 0.25×0.25×0.90 | -750±120 | × | ○ | 30/20 | 11.7 | 2.0 |
| F | 250 | 0.25×0.25×0.90 | -750±600 | × | ○ | 30/20 | 12.2 | 4.0 |
| D | 300 | 0.25×0.25×0.90 | -2,200±500 | × | ○ | 30/20 | 10.4 | 2.6 |
| Y | 3,000 | 0.25×0.25×0.90 | ±10% | × | ○ | 30/20 | 10.7 | 2.5 |
| Z | 10,000 | 0.25×0.25×0.90 | +30,-80% | × | × | 30/20 | 10.5 | 1.6 |
| X | 15,000 | 0.25×0.25×0.90 | +30,-90% | × | × | 30/20 | 14.0 | 2.4 |
(*1) 参考値
(*2) L=長さ、W=幅、T=厚み (高さ)
(*3) 温度範囲-25〜85度、基準温度25℃
(*4) L=ライン、S=スペース
表面電極を金とし、半導体ICと同様に金ワイヤによるワイヤーボンディング接合や金すずはんだによるダイボンディング実装が可能となる。
High Q、高誘電率の誘電体材料を使用することで機器の低損失化、小型化が可能となる。
アルミナ基板、チッカアルミ基板、高誘電率基板 (比誘電率=39) の材料に関してはスルーホール加工が可能となる。
また、基板の表裏面の任意の形状で金すずプリコーティング (金すずの予備はんだ) が可能となる。
図2: 金すずプリコーティング一例 (左が金すずプリコーティング実施)
高誘電率基板に薄膜抵抗を形成できるため、コンデンサ機能と薄膜抵抗を組み合わせることにより、CR複合部品への展開が可能となる。コンデンサと抵抗の組み合わせによるCR複合品は村田製作所がその先駆けとなった。
主に半導体ICと同じワイヤーボンディング接合、ダイボンディング実装が必要となる以下のアプリケーションにおいて整合用回路基板、バイパス回路基板、フィルタ、カスタムコンデンサ、コンデンサアレイ、抵抗アレイ等に適している。
図3: 薄膜回路基板 "RUSUB®" の用途例 (化合物系半導体パワーFET)
図4: 薄膜回路基板 "RUSUB®" の用途例 (受光モジュール)
受光モジュールのフォトダイオードの電源用フィルタとして表2に示すコンデンサと抵抗の一体品 (C+R標準品) をラインアップしている。
標準品以外にカスタムの容量値、抵抗値にも対応している。
表2: C+R標準品ラインアップ
| Part Number | Size (mm) | Thickness (mm) | Capacitance (pF) | Resistance (Ω) |
|---|---|---|---|---|
| RUCYT101K00009GNTC | 1.0×0.5 | 0.11±0.025 | 100±10% | 50±20% |
| RUCYT101K00011GNTC | 1.0×0.5 | 0.11±0.025 | 100±10% | 100±20% |
| RUCYT101K00012GNTC | 1.0×0.5 | 0.11±0.025 | 100±10% | 200±20% |
| RUCYT201K00010GNTC | 1.0×1.0 | 0.12±0.025 | 200±10% | 50±20% |
| RUCYT201K00013GNTC | 1.0×1.0 | 0.12±0.025 | 200±10% | 100±20% |
| RUCYT201K00014GNTC | 1.0×1.0 | 0.12±0.025 | 200±10% | 200±20% |
このC+R品は図5に示すように通過特性はローパスフィルタとなっており、高周波のノイズを除去することができる。
図5: C+R品の特性データ (通過特性30KHz〜40GHz)
コンデンサ単体と抵抗単体を別々に使う場合に比べて、C+R品を使うメリットは主に以下の3点となる。
1.の複合化による小型化は従来の実装面積のおよそ30〜40%の削減が可能となる。 受光モジュールでは限られたサイズの中でフォトダイオード、コンデンサ、抵抗、トランスインピーダンスアンプを配置する必要があり、実装面積の削減は設計テーマとしては常に検討されるテーマであり、C+R品による実装面積削減は有効であると考えられる。
2.の部品点数削減はC+R品を使えば薄膜抵抗をコンデンサに取り込むことになり、薄膜抵抗を削減でき、およそ30〜50%のコストダウンが可能となる。
昨今の光通信ネットワークの拡大で受光モジュールにはコストダウン要求がますます強まっており、コストダウン効果の高いC+R品は非常に有効である。
3.に関しては、抵抗とコンデンサを別々に使う場合、抵抗とコンデンサをつなぐワイヤーが必要となるが、このワイヤーは余計なインダクタンスとなり、フィルタ特性を劣化させてしまう。C+R品を使えば、抵抗とコンデンサが基板内で直接つなげられるので、ワイヤーが不要となり、余計なインダクタンスが発生せずフィルタ特性の向上が図れる。
光通信ネットワーク市場は今後もさらに成長すると予想され、セットの高速化、高性能化はますます進んで行くと考えられる。薄膜回路基板には小型、大容量化の要求が強く求められており、これらの要求にこたえるべく新商品の開発を進め、市場要求にミートした商品をタイムリーに提供していく。
※RUSUBは、 (株) 村田製作所の登録商標です。