電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2010年8月19日号に掲載された内容を再構成したものです。
| 掲載誌 | 電波新聞第2部「ハイテクノロジー」2010年8月19日号 |
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No. TA1082
より革新的で魅力的な製品が求められる中で、電子機器は進歩し続けている。その中核を担うのが高性能LSIであり、ユビキタス社会を支える通信機器から、その末端のPC・TV・携帯電話などの生活には欠かせない多くのデジタル機器に搭載されている。積層セラミックコンデンサはそれらの高性能LSIをサポートしており、動作中の負荷変動吸収やノイズ除去のためLSI周辺にデカップリング素子として多く配置されている。
これまでノイズ対策の基本としては「対象となるラインのインピーダンスを低くする事」が一般的な考え方であった。そのため、ESR (Equivalent Series Resistance) と呼ばれる抵抗成分の低い積層セラミックコンデンサはノイズ対策素子として最適であり、多数搭載されていたが、回路によってはそれが当てはまらない事例が出てきた。ESRが低すぎるため、反共振と呼ばれるインピーダンスのピークができてしまい、ピークができた周波数域でのデカップリング性能が低下してしまうのである。
その問題を解決するため、(株)村田製作所では敢えてESR値を高くしたESR制御型低ESLコンデンサの開発をスタートさせ、「LLRシリーズ」の商品化に成功した。本稿ではこの「LLRシリーズ」について紹介する。
「LLRシリーズ」では意図的にESR値を高くしているのが特徴であり、100〜1,000mohmまで4種類の抵抗値に対応している。 (表1)
表1: LLRシリーズラインアップ表
| Type | Thickness (mm max.) |
Capacitance (µF) |
ESL (pH) |
ESR (mohm) | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 100 | 220 | 470 | 1,000 | |||||
![]() |
0816サイズ (mm) | 0.55 | 1 | 120 | X7S <1µF> (4V) |
X7S <1µF> (4V) |
X7S <1µF> (4V) |
X7S <1µF> (4V) |
コンデンサの電気的特性として理想的には容量を表すESC (Equivalent Series Capacitance) のみであるが、材料である誘電体の損失や内部電極の損失により、ESL (Equivalent Series Inductance) と呼ばれるコイル成分やESRと呼ばれる抵抗成分が存在する。そのため、図1のような谷型のインピーダンス特性を示す。積層セラミックコンデンサはESRが低い (Q値が高い) 事が特徴であるが、逆にそれが原因となり異なる容量のコンデンサやLSIパッケージの容量成分と反共振を起こしてしまう場合がある。それを防ぐためにコンデンサのESR値を高め (Q値を低くし) 、バスタブカーブのようなインピーダンス特性を持たせたのが「LLRシリーズ」の特徴である。更に、LSIの負荷変動を抑えるためにはコンデンサのESL値を抑え、充放電特性を高める事が理想的であるが、従来一般的であった積層セラミックコンデンサの内部電極パターンを変更する事でのESR制御ではESL値も同時に増加してしまう問題があった。当社では独自の設計を採用する事により、ESL値を保ったままESR値を制御する事にも成功している。これにより、広帯域で機能するコンデンサ性能を実現している。
図1: コンデンサのインピーダンスカーブ
コンデンサのESR値が低すぎる事により反共振を起こしてしまう事がある。ここではLSIパッケージと反共振を起こす事例を取り上げる。
一般的な回路構成で考えた場合、高性能LSIとその電源となるDC-DCコンバータの間に各種コンデンサが配置される (図2)。 C01に示されているオンパッケージのコンデンサ (LSIパッケージ基板上に搭載されるコンデンサ) は高周波領域を担うデカップリング素子として、C02/C03で示されている大容量セラミックコンデンサや100μFを超えるアルミ電解コンデンサは低/中周波領域のデカップリングのために搭載される。このような回路構成の場合、反共振の影響を受けやすい場所の1つがLSIパッケージとオンパッケージコンデンサ (C01) 間で、LSIパッケージの持つ微小な容量成分とパッケージ上に搭載されたコンデンサ (C01) のESL成分によるLC共振により反共振が起きてしまう。
図2: LSI搭載基板の回路構成例
この反共振を抑制する方法としては、
がある。1と2に関しては機器設計時に選定される部品で決定してしまう側面が強いため、3のESR値を高くする事が最も簡易的な方法であり、それを実現するのが「LLRシリーズ」である。
LSIパッケージ上に搭載されているコンデンサ (C01) を全て「LLRシリーズ」に変更した場合のシミュレーションデータが図3である。抵抗値が大きくなるにつれ、反共振ピークが低くなっている事が分かる。今回行ったシミュレーションではピーク値が50分の1に低減ができており、対象周波数領域でのノイズ低減が期待できる。
図3: 回路インピーダンスシミュレーションデータ
降圧型のDC-DCコンバータの出力側には出力電圧変動 (リップル電圧変動) を抑えるためにコンデンサが使われている。また、DC-DCコンバータから出力された電圧を平滑化するために、出力側にLCローパスフィルタを形成している (図4)。ESRの低い積層セラミックコンデンサを該当箇所に使うと、発振してしまう。発振を防止するには位相余裕を持たせるためにコンデンサのESR値を上げる方法があるが、その役割を「LLRシリーズ」を用いる事で実現でき、積層セラミックコンデンサの弱点であった低ESRによる発振を克服する事が可能である。これにより、回路設計における幅を広げる事ができると考えている。
図4: 降圧型DC-DCコンバータ
積層セラミックコンデンサに求められる特性としては、これまで電源ラインやI/Oラインを低インピーダンスに保つための大容量・低ESR特性だけであったが、機器の高機能化によりESR制御という新たな発想が出てきている。このような新たなニーズに柔軟に対応する事で、積層セラミックコンデンサは更に使いやすい受動部品として価値を高める事ができると考えている。
今後も「LLRシリーズ」に求められる要求性能を適切に捉え、商品ラインアップの拡充を図っていく。