電波新聞「電子部品総合特集」2012年1月6日号に掲載された内容を再構成したものです。
| 掲載誌 | 電波新聞「電子部品総合特集」2012年1月6日号 |
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No. TA11D4
スマートフォンやタブレットPC、ポータブルゲーム機の普及に伴い新しいHMI (ヒューマンマシンインターフェース) の要望が高まる中、柔軟な圧電性有機フィルムは様々なアクションに対して信号を発生させられるためこれらへの応用が期待されている。しかしながら従来の圧電フィルムは焦電性を持つため温度による反応が生じ、アクションの検知との分離が難しいという課題があった。そこで株式会社村田製作所は、関西大学と三井化学株式会社との共同研究で、焦電性のない高透明度の有機圧電フィルムを開発した。本稿では、このフィルムの特徴と、フィルムを応用したデバイスに関して報告する。
新開発の有機圧電体フィルムはキラル高分子である特殊ポリエステルを原料としており以下のような特徴がある。
図1において点線で示されているのが元のフィルムの形状である。このフィルムに対して紙面奥から手前に向かって電場を印加すると逆圧電効果により実線のような変形 (誇張表現) を生ずる。矢印は分子の配向方向を示している。

図1: d14逆圧電効果による変形
図2はフィルムの分子配向を異ならせた場合の逆圧電効果による変形の違いを示したものである。フィルムAは元のフィルムから分子の配向方向に対して45°の角度に短冊状に切り出したもの、フィルムBは分子の配向方向に沿って短冊状に切り出したものであり、それぞれをPETフィルムに貼り付け、一端を固定してある。電場はそれぞれのフィルムの主面に形成された電極に電圧をかけることによって印加されている。フィルムAでは曲げの変形が生じ、フィルムBではねじりの変形が生じていることが分かる。

フィルムA
フィルムB
図2: 分子の配向方向と変形モード
逆にそれぞれのフィルムにこのような変形を与えた場合、圧電効果により電圧が発生する。即ちフィルムAでは曲げを、フィルムBではねじりをセンシングすることが可能となる。
そして、フィルムAにねじりの変形を与えた場合には、電極面内に発生する電荷分布がマクロ的に打ち消し合い電圧は生じない。同様にフィルムBに曲げの変形を与えた場合も電圧は生じない。これにより特定の変形モードを検出することが可能である。

写真1: リーフグリップリモコン外観
図3: リーフグリップリモコンの断面図
リーフグリップリモコンは、曲げやねじりの単純な動作によりTVをリモートコントロールできるものである。
中央のプレート部分はアクリル板の2層構造となっており、一方のプレートには曲げ検知用の圧電フィルム、他方にはねじり検知用の圧電フィルムを貼り付けている。そして2層のプレートの隙間にはフレキシブルな光電池 (色素増感電池) フィルムを挿入している。圧電フィルムの透明度が高いため光電池の発電効率を落とすことがない。両側のグリップ部分には二次電池、電源回路、送信回路、センサ回路が埋め込まれている。光電池は光がある環境では常に発電しその電力を二次電池に蓄えているため、電池交換は不要である。
このリモコンでは以下のような操作が出来る。
このように手元を見ることなく直感的な操作でTVをコントロール出来るため、高齢者が一々老眼鏡をかけてボタン操作を行う必要がない。
写真2: タッチプレッシャーパッド
図4: 検知原理
タッチプレッシャーパッドは従来の静電容量型のタッチパネルに押圧力検知を加え、XYZの3軸検知を実現したものである。
曲げ検知用圧電フィルムの両面に従来の静電容量方式の位置検知用電極に加え押圧力による電圧の発生を検知する電極を複合して形成し、押圧力が加わったときわずかにタッチパネル自体がたわむことを検知している。従来の圧電フィルムでは焦電性があるために指で触れただけで電圧が発生してしまい押圧力を正確に検知することが出来なかったが、焦電性がない新開発のフィルムでは正確に押圧力を検知することが可能となった。また、従来のタッチパッドに歪みセンサ等の他のセンサを加えて押圧力を検知できるようにしたものではなく、タッチパネルそのものが押圧力を検知できるため、構造を非常に単純化できるというメリットを持つ。電極を透明にしたタッチパネルへの応用に際し、この新開発のフィルムは極めて透明度が高いことも大きなメリットの1つである。
変位センサとしての応用では、曲げ、ねじりの変位量によって発生する電圧の大きさが変動するため、直感的なコントロールが要求されるゲーム機器などへの応用はもちろん、例えば介護ベッドの姿勢制御等のコントロール等に利用でき、今後迎える高齢化社会における優しいHMIの1つとして有望である。
また押圧力検知タッチパネルでは指一本の操作でズームイン・アウト等の操作が可能でスマートフォンなどの使い勝手を格段に向上させることができるなど、新感覚のHMIとしての期待も大きい。様々な場面での用途を探索し、人とマシンを優しく繋ぐセンサ商品群の一助となれるよう開発を進めていきたい。