ノイズ対策ガイド

ノイズ対策の基礎 【第1回】 EMIフィルタって何?

【このコラムについて】

このコラムでは、ノイズ対策の基礎知識について、「EMIって何?」という部分から、各種ノイズ対策部品のはたらき、使い方にわたって解説させていただきます。
まず第1回は、「EMIフィルタって何」から始めさせていただきます。

【はじめに】

「EMI」というのはElectro Magnetic Interference の頭文字をとったもので、日本語では「電磁妨害」という意味になります。つまり、EMIフィルタというのは電磁妨害を解消するためのフィルタを指します。ただ、こんなことを言っても難しいのでEMIフィルタが生まれた背景を説明させていただきます。

最近は、身の回りに電子機器があふれるようになりました。これらの電子機器は中にデジタル回路が使われています。デジタル回路には高周波の電流が流れているため、この電流が基板パターンやケーブルの中を通ると、これらの経路がアンテナとなって電波が放射されます。近くに別の電子機器があった場合、この電波が別の電子機器に入り込んで悪影響を与えることがあります。たとえば、ラジオ受信機のすぐ近くにパソコンを持ってくると、ラジオの音に雑音が入ることがあります。

これは、パソコンのデジタル回路で発生したノイズが電波となってラジオ受信機のアンテナに入って、雑音となった例です。また、強い電波がデジタル回路に入り込むと、デジタル信号の波形が変わってデジタル回路が誤動作することもあります。ノイズの問題は空間を伝わる電波だけでなく、電源ケーブルなどでつながっている機器同士でも発生することがあります。

ノイズ障害発生の条件は?

 

【ノイズ問題を解決するには?】

これらのノイズ問題を解決するためには2種類の方法があります。ひとつ目はノイズを出している機器がノイズを出さないようにすることです。これをエミッション対策といいます。

もうひとつはノイズを受ける機器にノイズが入っても雑音が入ったり誤動作したりということが起こらないよう、受ける側の機器で対策することです。これをイミュニティ対策といいます。「イミュニティ」とは「免疫」という意味です。病気に対する免疫と同様にノイズに対する免疫をつけて、ノイズが入ってきても問題ないようにするのがイミュニティ対策になります。
エミッション対策とイミュニティ対策の両方を合わせてEMC (Electro Magnetic Compatibility:電磁両立性)対策と呼びます。

ノイズ対策の2本柱

 

特別な場合を除き、エミッション対策とイミュニティ対策のどちらかを十分に行えばノイズの問題は解決します。

エミッション対策ではどこからどんなノイズが出るか分かっているためにピンポイントでの対策ができますが、イミュニティ対策ではどこからどんなノイズが入ってくるかわからないためエミッション対策よりも難易度が高くなります。このため、世の中では、エミッション対策でノイズ問題を解決するほうに重点を置いています。

各国ではこの考え方からノイズ問題を解決するために基準を設けており、一定量以上の電波や伝導ノイズを出さないように定めています。
(一部のイミュニティ耐性も求められます)

EMIフィルタは、これまで解説したような、電磁障害(EMI)を防ぐために、エミッション対策やイミュニティ対策を行う際に使われるノイズ対策部品です。

次回は、ノイズ対策部品の考え方をご紹介する予定です。

 

担当:村田製作所 コンポーネント事業本部 販売推進企画部 三屋 康宏

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